[9月の創発2010レビュー]
「川を『みる』」を観る。そして川を視る。
川口市内を走る全長5.8kmの閉鎖河川、「旧芝川」を「みる」事をテーマとした展示会。
この展示はその川の近くに位置するKAWAGUCHI ART FACTORY(KAF)にて開催された。
展示会場は今アーチスト達が集い、住まう場所となっているが、その昔は芝川に恩恵を受けた鋳物工場だったのである。
鉄産業の衰退と共にキューポラも衰え、同時に人の営みを支えて来た川も衰弱している。
洪水対策として上下流を閉鎖した都市河川である旧芝川の環境問題。共に生きて来た元鋳物工場を使う事は必然と言える。
「みる」という行為をタイトルのごとく様々なやり方で5つの空間に表現した作家たちは、川を徹底して「みて」考えたようだ。
フロントギャラリーでは林 洋典が芝川と川口という土地に対する深い見識を写真と文章で見せ、花野井 薫が祭壇のような植物インスタレーションで芝川に祈りを捧げる。
崔誠圭はスペース1で芝川自体を切り取って来たかのように採集された生物達を展示し、水の循環と浄化を表現した。
スペース2では田中大介が7つの「みる」をテーマに、写真、音、映像など様々な素材と切り口で芝川を考えさせた。
スペース3では山田純平があえてKAFの屋根裏を使い、自分自身の「みる」という行為の距離感を提示した。
鉄骨がむき出しなスペース4では、あらかわあつこが最後を飾る。林 洋典が語った「川の周辺まで「みて」本当に「みた」と言える、という言葉通りに芝川周辺風景を写真で切り取った。そこにはどこにもありそうに見えて実は独特である、川と共に生きた街の「跡」がみえた。
9月11日には「サルベージワークショップ」という橋から川に捨てられた自転車を釣り上げる浄化イベントも行われ、学生や地域住民も多数参加した。
また、シンポジウム<環境との対話~「芝川をミル 水の行方」>も開かれ、都市環境問題やアートについて語られた。
展示会場を提供したオーナーも参加しKAFについて語った。川口の産業と文化の象徴と言えるキューポラ。その記憶を刻印し、川と共に栄え衰えた工場跡に響くリアルな話は、正に川に縁のあるもの全てが「川」としての実態だという事を実感させた。イベントに集った参加者の後ろに響くのは芝川の水が天井から落ちる音と少し生き物的な匂い。ある参加者は秋を感じると言った。閉鎖河川でも街の中に季節や自然の力を伝えているのだ。
人々が常にそれを感じる事が出来れば、街の生活は変化に富み、自然の揺らぎと共に精神的に豊かになって行くのではないか。
そのために、環境問題にアートな切り口で挑む存在を地域の人たちへ知らせ、更なる関わりで広げる事が課題だろう。
「川を『みる』」を観る。そして川を視る。
崔誠圭(出品作家)
川口市内を走る全長5.8kmの閉鎖河川、「旧芝川」を「みる」事をテーマとした展示会。
この展示はその川の近くに位置するKAWAGUCHI ART FACTORY(KAF)にて開催された。
展示会場は今アーチスト達が集い、住まう場所となっているが、その昔は芝川に恩恵を受けた鋳物工場だったのである。
鉄産業の衰退と共にキューポラも衰え、同時に人の営みを支えて来た川も衰弱している。
洪水対策として上下流を閉鎖した都市河川である旧芝川の環境問題。共に生きて来た元鋳物工場を使う事は必然と言える。
「みる」という行為をタイトルのごとく様々なやり方で5つの空間に表現した作家たちは、川を徹底して「みて」考えたようだ。
フロントギャラリーでは林 洋典が芝川と川口という土地に対する深い見識を写真と文章で見せ、花野井 薫が祭壇のような植物インスタレーションで芝川に祈りを捧げる。
崔誠圭はスペース1で芝川自体を切り取って来たかのように採集された生物達を展示し、水の循環と浄化を表現した。
スペース2では田中大介が7つの「みる」をテーマに、写真、音、映像など様々な素材と切り口で芝川を考えさせた。
スペース3では山田純平があえてKAFの屋根裏を使い、自分自身の「みる」という行為の距離感を提示した。
鉄骨がむき出しなスペース4では、あらかわあつこが最後を飾る。林 洋典が語った「川の周辺まで「みて」本当に「みた」と言える、という言葉通りに芝川周辺風景を写真で切り取った。そこにはどこにもありそうに見えて実は独特である、川と共に生きた街の「跡」がみえた。
9月11日には「サルベージワークショップ」という橋から川に捨てられた自転車を釣り上げる浄化イベントも行われ、学生や地域住民も多数参加した。
また、シンポジウム<環境との対話~「芝川をミル 水の行方」>も開かれ、都市環境問題やアートについて語られた。
展示会場を提供したオーナーも参加しKAFについて語った。川口の産業と文化の象徴と言えるキューポラ。その記憶を刻印し、川と共に栄え衰えた工場跡に響くリアルな話は、正に川に縁のあるもの全てが「川」としての実態だという事を実感させた。イベントに集った参加者の後ろに響くのは芝川の水が天井から落ちる音と少し生き物的な匂い。ある参加者は秋を感じると言った。閉鎖河川でも街の中に季節や自然の力を伝えているのだ。
人々が常にそれを感じる事が出来れば、街の生活は変化に富み、自然の揺らぎと共に精神的に豊かになって行くのではないか。
そのために、環境問題にアートな切り口で挑む存在を地域の人たちへ知らせ、更なる関わりで広げる事が課題だろう。
[2011/1/24]