[9月の創発2010レビュー]
水の上でうたう 水彩画展 vol.2を観て
木がうっそうと茂るのを横目に見ながらギャラリーの扉を開けると、絵が飾られた空間から醸し出される緊張感にハッとしました。4人の先生方のグループ展と存じていましたが、1人の方の個展?と錯覚する程、漂う空気は一つに統一されている様でした。後になり、この展示会には「水の上でうたう」というタイトルが付いている事に気付き、作家の方々が「水」というテーマで作品を出品している為なのだろうと思いました。
ギャラリーの白く塗られた石の壁に飾られた水彩画は、とても鮮やかで透明度が高く、浮かび上がって見えました。それは溜息の出る程美しい色合いでした。10号ほどの大きさの、乱れ咲く赤い花の絵と、優しく囁きかけてくる様な白い花が目に飛び込んで来ました。動と静の迫力を感じ、その側には涼しげな水辺そのものの作品が飾ってありました。水辺の風景に誘われながら、光と影の対比が美しい作品達の前へと足を進めて行きます。
異国の風景なのか、白い服を身にまとい後ろ向きで会話をしている女性の絵がありました。逆光で描かれていながらも、光の柔らかい表現から、彼女たちの声や表情が見えるようでした。水辺の風景は、水面がゆらゆらと揺らぎ、穏やかな都会の街並みをくっきりと映し出していました。
そのまま先へ進むと、入り口付近に飾られていた静かに咲く花がありました。緑の中に浮かび上がる白い花は、静かな中にも自然の力強さを感じさせ、生々しく見えました。さらに先へ進むと、暖色系の美しい花が花瓶にいけてありました。花弁が何層にも重なって見える様描かれていて、触れてみたくなり、つい手がのびそうになりました。
壁を越えて進むと、海辺のテラスが広がっていました。ハガキサイズの小さい作品達が、大胆な線、強い色彩の対比で、全体に広がる海の匂いを感じさせ、その風景にしばし見とれました。
その後、ギャラリーでの一時に後ろ髪をひかれる思いで、帰路につきました。私にとって、「水」というと「透明」です。自分は透明にはなれず、完全な透明なものも作ることができないでいるので、水に対し嫉妬のような感情を持っています。水は私が自分の作品を通して追い求めるものの完成型です。
この展覧会を観た時、出品者の方は、水に対し、憧れや癒しのイメージを持っているのではないかなと感じました。「母なる海」や、生物が活きることに不可欠なもの、又、人にはコントロールをしきれない恐怖の対象など…。
「水」というテーマは、十人十色で、限りのないイメージを沸かせてくれるものなのだと感じました。現代の水彩画の先駆者でいらっしゃる先生たちの共演を、この埼玉の地で観させて頂き、エルポエタさんに感謝しています。
水の上でうたう 水彩画展 vol.2を観て
小原直子(水彩画講師)
木がうっそうと茂るのを横目に見ながらギャラリーの扉を開けると、絵が飾られた空間から醸し出される緊張感にハッとしました。4人の先生方のグループ展と存じていましたが、1人の方の個展?と錯覚する程、漂う空気は一つに統一されている様でした。後になり、この展示会には「水の上でうたう」というタイトルが付いている事に気付き、作家の方々が「水」というテーマで作品を出品している為なのだろうと思いました。
ギャラリーの白く塗られた石の壁に飾られた水彩画は、とても鮮やかで透明度が高く、浮かび上がって見えました。それは溜息の出る程美しい色合いでした。10号ほどの大きさの、乱れ咲く赤い花の絵と、優しく囁きかけてくる様な白い花が目に飛び込んで来ました。動と静の迫力を感じ、その側には涼しげな水辺そのものの作品が飾ってありました。水辺の風景に誘われながら、光と影の対比が美しい作品達の前へと足を進めて行きます。
異国の風景なのか、白い服を身にまとい後ろ向きで会話をしている女性の絵がありました。逆光で描かれていながらも、光の柔らかい表現から、彼女たちの声や表情が見えるようでした。水辺の風景は、水面がゆらゆらと揺らぎ、穏やかな都会の街並みをくっきりと映し出していました。
そのまま先へ進むと、入り口付近に飾られていた静かに咲く花がありました。緑の中に浮かび上がる白い花は、静かな中にも自然の力強さを感じさせ、生々しく見えました。さらに先へ進むと、暖色系の美しい花が花瓶にいけてありました。花弁が何層にも重なって見える様描かれていて、触れてみたくなり、つい手がのびそうになりました。
壁を越えて進むと、海辺のテラスが広がっていました。ハガキサイズの小さい作品達が、大胆な線、強い色彩の対比で、全体に広がる海の匂いを感じさせ、その風景にしばし見とれました。
その後、ギャラリーでの一時に後ろ髪をひかれる思いで、帰路につきました。私にとって、「水」というと「透明」です。自分は透明にはなれず、完全な透明なものも作ることができないでいるので、水に対し嫉妬のような感情を持っています。水は私が自分の作品を通して追い求めるものの完成型です。
この展覧会を観た時、出品者の方は、水に対し、憧れや癒しのイメージを持っているのではないかなと感じました。「母なる海」や、生物が活きることに不可欠なもの、又、人にはコントロールをしきれない恐怖の対象など…。
「水」というテーマは、十人十色で、限りのないイメージを沸かせてくれるものなのだと感じました。現代の水彩画の先駆者でいらっしゃる先生たちの共演を、この埼玉の地で観させて頂き、エルポエタさんに感謝しています。
[2011/1/22]